有斐閣経済辞典を、一つづつ転載
有斐閣経済辞典を、一つづつ転載
みなさんから問い合わせがあった言葉を、有斐閣経済辞典からお答えします。工場マニアのみなさんのために、試しに「高炉」とかを調べたところ技術的解説をほんの少し交えながら経済的な解説をされてしまいましたですから、どのような質問も受け付けます。ただし、記載がなかった時にはご勘弁を。
調べたい言葉があれば、メールでどうぞ。
【 凡例 】
項( 英語:略称の場合はカタカナ読みを記載 )
- 解説本文 + 同義/反意の別項 + ホリのコメント
【あ】
インタレスト・グループ ( interest group )
- 企業と利害関係にあるものの集団、すなわち利害者集団のこと。主に株主、労働組合、消費者、政府、地域社会の住民をさし、企業活動に大して大きな影響力を持つ。企業は各種利害者集団との利害調整機能を遂行してこそ、自生体として存続して行くことが可能となる。(2002.12.12)
【か】
快楽価格 ( ヘドニック・プライス ) :=ヘドニック・アプローチ
経済基盤説 ( economic base theory )
- 都市の産業を、都市の需要を対象とする基盤産業とローカルな市場を対象とする非基盤産業とに2大区分する時、両者の雇用量に一定の比率が存在するならば、基盤産業の雇用増加は乗数効果が働いて総雇用の増加をもたらすことを示す理論であり、基盤産業が都市成長の起動因であることを主張する。
- なるほど、土建屋が儲かったり不況時に公共工事が増えることと関連があるかも
- (勝手に参考)B/N分析=地域経済基盤・非基盤分析:地域の経済活動を、地域の経済的基盤を支えている活動と、そのような活動に奉仕する活動とに区分し、両者がどのような産業部門で顕著であり、かつその活動量はどの程度であるかを計測することによって地域の経済活動の特徴を把握する方法。
後発国 ( latecomer )
- 先発国に比べ遅れて経済発展、工業化を開始した国。産業革命をはじめたイギリスと比べるとすべての国は後発国である。相対的概念で、どいつにくらべれば日本は後発であり、韓国は日本より後発である。ガーシェンクロン(A. Gerschenkron)のいう後発性の利益により、政策運営がうまくいった場合、後発国の発展過程は圧縮され、急速なキャッチアップが実現する。(2001.01.28)
後発性の利益 ( latecomer's advantage; advantage of backwardness )
- ガーシェンクロン(A. Gerschenkron)が見出した経験則。後発国は先発国の開発した新しい技術を導入しながら工業化を推進するため、潜在的には後発国の技術進歩は急速であり、したがって経済成長率も先進国を上回る高さを示す。(2001.01.28)
高炉 ( ブラスト・ファーネス、シャフト・ファーネス )
- 鉄鉱石から銑鉄を製造する竪型製錬炉で、スクラップを除く世界の鉄源の95%以上は、高炉で製造される。塊状の鉱石類とコークスを炉頂より投入し、下部へ熱風を吹き込む。降下する間に鉱石は還元溶融し、銑鉄とスラグに分かれて排出される。日産1万tをこえる大型高炉は、熱効率がきわめてよいが、コークス炉や焼結炉などを要し経済規模が大きいため、新設は容易ではない。溶鉱炉と同義。 (参考)製銑、溶融還元製鉄法、銑鉄、転炉
コール ( call )
- 民間金融機関が短期的な支払準備の過不足を相互に調整するインターバンク市場で取り引きされる資金をいう。オーバーナイト物、半日物、翌日物、期日物があり、取扱金額は、1000万円以上5億円未満、5億円以上の2種類があり、有担保と無担保がある。日本銀行がマネー・サプライを調節する場として金融政策運営上重要な取引である。 (参考)コール取引、コール市場
コール市場 ( call market )
- コール資金の取引が行なわれるインターバンク市場の1つ。市場の構成は、専門的仲介機関である短資会社と参加者である銀行、協同組織金融機関のほか、証券会社、証券金融会社、保険会社等からなる。 (参考)コール取引、コール
コール取引 ( call money transaction )
- 民間金融機関が短期的な支払準備の過不足を相互に調整するインターバンク市場で行なわれる取引の1つである。コール取引は(1)短資会社経由のもの、(2)金融機関相互が直接行なうダイレクト・ディーリングがある。従来は短期のものが中心であったが、取引の多様化が進み、長期の資金融通手段としても利用されている。
【さ】
生産性 ( productivity )
- 生産の効率の度合いを示す指標。ある単位期間に生産される生産物の総量を、その期間に投入された生産用その総量で割った価で示す。生産要素が労働の場合を労働生産性という。(2001.01.14)
地場 ( local dealers )
- 「地場」産業と言うように一定の地域を指すが、証券市場では、とくに取引所所在地の「地元」の意味から転じて、一般に取引所周辺の中小証券や、それらの店に出入りしている玄人客などをさす。
地場受け
- 証券会社の役職員が、他の証券会社に有価証券の売買取り引きの注文を出すこと。事故につながることが多いので、所属証券会社の書面による認可がある場合を除いて、証券業協会の規則によって禁止されている。
地場産業 ( local industry )
- 一定の地域に集中して産地を形成し、その地域の資源を活用して製品を生産し、販売先を広く地域外に求める技術を生かした特産品づくりと、その生産工程における社会的分業体制等が見られる。
組織間関係 ( inter organizational relation )
- 組織と組織との何らかの形のつながり。単なる取引きや情報交換のみならず、組織間の共同行動やパワー関係も含む。市場でも階層でもない、互いに自律し相互依存している組織間関係に注目し、組織間関係の形成・展開を解明するモデルとして資源依存モデルや組織セット・モデルがある。(参考)資源依存モデル、組織セット (2002.12.12)
組織セット ( organization-set )
- マートン(R.K.Merton)の役割セットを組織現象に適用した概念で、エヴァン(W.M.Evan)によって提唱された。焦点組織の視点から捉えられた、それと相互作用している一群の組織をいう。組織と組織セットの関係は対境担当者の行動を介して行なわれる。(参考)組織間関係、利害関係者
【た】
短期金利 ( short-term rate of interest )
- 短期資金(期間が1年未満のもの)の金利。短期利子率ともいう。代表的なものとして、通常、優良な商業手形の割引歩合があげられるが、そのほかにもコール、債券現先、CDレートなどがある。金利情勢に応じて弾力的に変動する。 (反意)長期金利
長期金利 ( long-term rate of interest )
- 長期資金(期間が1年以上)の金利。通常、将来についての予測が不確実であるため、短期金利よりも高水準にある。代表的なものとしては、国債、事業債など長期債の利回り、信託予想配当率、長期プライム・レートなどがある。 (反意)短期金利
トレードオフ
- 例えば、完全雇用と物価安定と云う二つの政策目標の間には、失業率を低めようとすれば物価の上昇圧力が強まり、物価を安定させようとすれば失業率が高まる、という両立しえない関係が見られる。このように、一方の目標値を好ましい状態にするためには他方の目標値を好ましくない状態をさせざるを得ない関係を云う。 (参考)フィリップス曲線
ドラッカー ( Drucker, Peter Ferdinand 1909- )
- アメリカの経営学者。オーストリア生まれ。高度産業社会における企業の基本原理や特性を考察し、目標としての顧客の創造、経営者や事業部制組織など多面的な研究を進め、それに即した経営管理のあり方を展開しようとした。経営コンサルタントとしても有名。 〔主著〕The End of Economic Man, 1939;The Age of Discontinuity. 1969.
【な】
二重革命
ニュー・ビジネス ( new business )
- 1980年代に生まれてきた人材派遣業、レンタル業、パーティ・アトラクション要員派遣業など新しいサービス業の総称。新しい社会経済のニーズに応じて創業された企業のうち、経営企画によって成り立っているサービス業的色彩の強いものをニュービジネス、研究開発や技術、ハードを強調するものをベンチャー・ビジネスと呼んだ。 (参考)ベンチャー・ビジネス (2001.01.14)
【は】
フィリップス曲線
- 失業率と貨幣賃金率の上昇率との間に存在すると考えられる関係を示す曲線で、イギリスの統計資料に基づきフィリップス(アルバン・ウイリアムス・フィリップス)によって実証的に導出された。彼によれば、過去の経験上、失業率が約5.5%の時に貨幣賃金率は一定となり、貨幣賃金率の上昇率が2%の場合の失業率は約2.5%である。物価の安定と完全雇用との間の二律背反を示すものとして注目されているがその理論的な基礎付けは十分でなく、またその後の実証的研究から、曲線の形状が必ずしも安定的でない事が知られるに至っている。
費用・便益分析 ( コスト−ベネフィット・アナライシス )
- 政府支出の効率化を図る目的で発展された分析手法。政府支出の対象は、多くの場合市場による評価が不可能であるし、外部効果が大きい。このような外部効果をも積極的に取り入れて投入した費用と得られる便益を測定、対比し、どの方法がもっとも効果的かを決定する。 (参考)費用・効果分析
費用・効果分析 :=費用・有効度分析
費用・有効度分析 ( コスト−エフェクティブネス・アナライシス )
- プロジェクトの経済効果を必ずしも金額換算したものではなく、目的の達成度として捉え、これと費用とを比較分析する方法で、当該プロジェクトの優先順位、採択の決定への判断材料を提供するもの。効果が必ずしも金銭表示されない点で費用・便益分析とは異なる。費用・効果分析ともいう。 (参考)費用・便益分析
二つの道
- 「二つの道」理論は、直接的生産者に注目した場合、封建的農奴が賃労働者へと直接的形態変化する場合と、封建的かつ共同体的農民が小商品生産者へ自己転変する場合とを意味する。革命的な方法、つまりアメリカ型では直接的生産者自身の歴史的性格の発展的な変化が基礎的に進展していることを条件としている。したがって、改良的な方法、つまりプロシア型では直接的生産者の歴史的性格は基本的には変革されない。ここに、旧生産様式が維持されるゆえんがある。(2001.01.28)
- 出展:http://www.asahi-net.or.jp/~CY9H-SZK/hiro/243.htm
ヘドニック法 ( ヘドニック・アプローチ )
- ある財を様々な属性が集合したものとみなし、各属性が持つ帰属価格を回帰分析によって明らかにする手法。例えばヘドニック資産価値評価法では、住宅や土地の価格とその属性を観察し、教育サービスや環境の質などに潜在的についている価格を顕在化させる。
ヘドニック・アプローチ :=ヘドニック法
ベンチャー ( venture )
- ベンチャー・ビジネスの略称。英和辞典では、ベンチャーとは一般に冒険、探検、冒険的な事業と訳すが、企業経営の側面では高度で独自の技術と斬新な経営ノウハウを持って、ハイ・リスクな事業領域に積極果敢に取り組む事業をさす。 (参考)ベンチャー・ビジネス、ベンチャー・キャピタル (2001.01.14)
ベンチャー・キャピタル ( venture capital )
- ベンチャー・ビジネスの略称。英和辞典では、ベンチャーとは一般に冒険、探検、冒険的な事業と訳ベンチャー・ビジネスへの投融資(機関)をさす。ベンチャー・ビジネスは高度の技術力が斬新な経営ノウハウをもつ将来有望な中小企業であるが、大企業と違い経営的・財務的に脆弱な面を持つ。ベンチャー・キャピタルはその立ち上がりの時に支援する。 (参考)ベンチャー・ビジネス、ベンチャー (2001.01.14)
ベンチャー・ビジネス
- 新しい高度の技術と斬新な経営ノウハウをもって自らの力で新規事業を開拓し、設立された中小・中堅企業をさす。比較的若い企業であり、企業者精神の旺盛な経営者が多い。これを資金的に支援するベンチャー・キャピタルの存在がその成功の鍵を握っている。和製英語。 (参考)ベンチャー・キャピタル、ベンチャー (2001.01.14)
ポジショニング
- 位置付けのこと。具体的には、市場における競争製品に対する自社製品の差別的な位置付けや、さらには企業(活動)そのもの、あるいは広告コンセプト等々、さまざまなものについての位置づけを意味して用いられる。同質化が進展するなかで自社の位置を明確にし、効果的かつ効率的なマーケティング活動を展開するための適切かつ必要な作業である。
歩行者天国 ( ペデストリアン・モール )
- 歩行者専用の空間。旧西ドイツの主要都市で自動車を制限して歩行者が安心して買い物、散歩のできる街を作ったが、日本では1970年8月の銀座で休日に自動車を締め出して歩行者の空間を作ったのが最初で、以後各地に広がった。 (参考)モール
【ま】
モール
- 歩行者が自由に活動できる空間であり、単に歩く機能だけでなく、休憩したり、お茶を飲んだりできる機能を備えた空間をいう。公共交通機関の通行を認めているモールをトランジット・モールという。(参考)歩行者天国
【ら】
利害関係者 ( stake holder )
- 組織の目的達成に影響を与え、影響を受ける集団をいう。企業の場合には、株主、金融機関、原材料供給業者、労働組合、顧客、流通業者、政府などが含まれる。いかなる利害関係者が影響を与えるのか、いかに利害関係者と良好な関係を作るのかが重要である。(参考)インタレスト・グループ、組織セット (2002.12.12)
炉頂圧発電 ( パワー・ジェネレーション・バイ・ブラスト・ファーネス・トップ・ガス・プレッシャー )
- 大型高炉は、通常、数気圧の高圧で操業している。高炉からの排ガスを外部に放出する前に、タービンを通させて、圧力を電力に変換することを狙った装置。旧ソ連で開発され、日本を中心に広く普及している。 (参考)高炉
【A】
CVM ( Contingent Valuation Method )
- 環境のような非市場財の経済的価値を計測する方法の一つで、アンケートやインタビューによって、直接それらの財に対するWTPやWTAを聴き出すやり方。仮想の財の仮想の取り引きを設定するところから「仮想的市場法」とも云う。 (参考)費用・便益分析、ヘドニック法、WTP、WTA
DINKS ( ダブル・インカム・ノー・キッズ )
- 子供のいない共働き夫婦。80年代アメリカで使われ出した用語。自らの意思で子供を持たず、自由で贅沢な消費生活を楽しもうとするカップル。日本では子供を作るまでの過渡的状態である場合が多い。 (参考)DEWKS
DEWKS ( ダブル・エンプロイド・ウイズ・キッズ )
- 共働きで子供のいる夫婦。アメリカでは80年代後半に入ると、30代のキャリアウーマンの出産熱が高まり、DINKSに代わり新しいマーケティングターゲットとなった。教育・保育サービス、家事代替商品等に消費ニーズの特徴がある。 (参考)DINKS
RBI/RBM ( Risk-Based Inspection/Maintenance )
- プラントや設備機器に対し、ブロックごとの『リスク』の大きさを評価し、これを基準に検査(Inspection)、補修(Maintenance)を計画する手法です。 メジャー系石油プラントで利用が始まったRBMは、API(米国石油協会)やASME(米国機械学会)が普及を推進し、今では欧米の石油化学、発電プラントにまで、幅を広げようとしています。 (注)『リスク』=損傷の発生しやすさ(Likelihood) × 被害の大きさ(Consequence)
- 出展:http://ihins.ihi.co.jp/rbi-rbm/
WTP ( ウィリングネス・トゥ・ペイ )
- 個人が財を得る時、それに対して支払ってもよいと思う最大金額。財を得ると同時にWTPを支払えば、個人の福祉は一定に保たれる。経済的変化の便益は究極的にはWTPによって測られ、市場財については、需要曲線の高さが限界WTPを示している。 (参考)費用・便益分析 (反意)WTA
WTA ( ウィリングネス・トゥ・アクセプト )
- 個人から財(goods)を奪ったり、他人に「負の財(bads)」を押しつけたりする場合に、それにもかかわらずその個人の福祉水準を低下させないために必要な最小補償金額。経済的変化の費用は、究極的にはWTAによって測られる。 (参考)費用・便益分析、WTP